経済指標を知り、市場を予測

FX取引の舞台となる外国為替市場は、グローバルな政治経済の動きに左右される非常にダイナミックなマーケットです。
外国為替市場の動きを左右する重要な要素となるのが、世界各国のファンダメンタルズ(経済的基礎)要因、いわゆる経済指標と呼ばれる統計データです。
ここでは外国為替市場に影響を与える主要な経済指標につい て、簡単に説明します。



政策金利(せいさくきんり)

各国の中央銀行が金融政策を決定する際に指標とする短期金利のこと。日本では日本銀行(日銀)が金融政策決定会合で誘導目標を決める無担保コール翌日物金利、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で誘導目標を決めるフェデラルファンド(FF)金利が政策金利となっています。


国内総生産(こくないそうせいさん、GDP)

一国の経済成長の推移を見る代表的な景気指標。国内の経済活動によって生み出される付加価値の合計です。付加価値とは、具体的に国内の消費と投資活動を指します。国内の消費と投資活動が活発で景気が好調であれば、GDP成長率が伸び、プラス成長となります。反対に景気が後退していれば、GDP成長率は減少し、マイナス成長となります。英語ではGDP(Gross Domestic Productの略)といいます。
日本のGDPは内閣府が四半期、1年、年度ごとの数字を発表しています。なかでも重視されるのが、物価変動の影響を除いた実質GDPです。米国のGDPは商務省が発表しています。速報値と改定値がありますが、前者と後者の数字にかなりブレが生じるので、市場では改定値の方を注目しています。


貿易収支(ぼうえきしゅうし)

モノの輸入と輸出のバランスを表す指標。貿易収支=輸出-輸入。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字となり、輸入額が輸出額を上回れば貿易赤字となります。日本では財務省が毎月前月分の貿易統計を発表しています。米国では商務省が貿易収支を発表しています。為替レートの動向が貿易収支の黒字、赤字に影響するので注意しましょう。米国(日本)の貿易赤字が拡大すればドル(円)安に振れ、貿易赤字が減少すればドル(円)高に振れる傾向があります。


雇用統計(こようとうけい)

一般的には失業率ともいいます。労働力人口のうち、どれだけ失業者がいるのかを示す指標。労働力人口、失業者の定義などは各国で異なります。日本では総務省統計局が毎月、「労働力調査」として完全失業率などを発表しています。特に米国の労働省が発表する雇用統計は、市場の注目度が非常に高く、外為相場の動きに影響を及ぼします。米雇用統計のなかでも、非農業部門の雇用者数に注目しましょう。


小売売上高(こうりうりあげだか)

個人消費の動向を判断する重要な景気指標。米商務省が毎月発表しています。事前の市場予想を上回る数字が発表されれば、ドルが買われますし、反対に数字が悪ければドルは売られることになります。欧州ではユーロ統計局が小売売上高を月次で発表しています。日本では、日本百貨店協会が発表する全国百貨店売上高などが注目されます。


ISM指数(あいえすえむしすう)

米サプライマネジメント協会(ISM)が毎月発表する景気指数。全米企業の購買部門の担当者への調査で、指数が50を超えていれば好況、50を下回れば不況という、景気の先行きを判断する重要な指標です。製造業部門、非製造業部門の2つの指数があります。


対米証券投資(たいべいしょうけんとうし)

米国の財務省が毎月発表している海外から米国への証券投資額(国債、社債等含む)の統計。貿易収支の赤字幅をカバーできる米国への証券投資があれば、貿易赤字を縮小する要因となり、米ドルが買われることになります。その逆に米国への証券投資が貿易収支の赤字幅をカバーできなければ、米ドル売りの要因となります。


ミシガン大学消費者信頼感指数(みしがんだいがくしょうひしゃしんらいかんしすう)

ミシガン大学のサーベイ・リサーチセンターが発表する全米の消費者マインドを指数化した指標。消費者の景況感を示す先行指標として、民間調査会社のコンファレンス・ボードが発表する消費者信頼感指数とともに注目されています。


消費者信頼感指数(しょうひしゃしんらいかんしすう)

米国の民間調査会社のコンファレンス・ボードが発表する指標。消費者に対する調査をベースに、1985年を100として消費者心理の動向を指数化しています。ミシガン大学消費者信頼感指数とともに、消費者の心理動向を示す指数として注目されています。


製造業新規受注(せいぞうぎょうしんきじゅちゅう)

米商務省が製造業の出荷、在庫、新規受注、受注残高を翌々月の月初に発表する指標。そのなかでも速報値としてその前月に発表される耐久財新規受注が特に注目されています。


耐久財新規受注(たいきゅうざいしんきじゅちゅう)

米商務省が毎月下旬に、前月分の製造業の受注額の速報値を発表しています。企業の設備投資の動向を見る先行指標として、輸送関連を除く受注額、国防関連を除く受注額、非国防資本財(航空機を除く)の受注額などが注目されます。


新規失業保険申請件数(しんきしつぎょうほけんしんせいけんすう)

米労働省が毎週発表する指標。失業者が初めて失業保険給付を申請した数で、一般的に35~40万件を超えると景気後退に影響を与えると言われています。また、週間で発表されるので、毎月初めに発表される雇用統計の先行指標としても注目されています。


日銀短観(にちぎんたんかん)

企業短期経済観測調査のこと。日銀が四半期ごと(発表は1、4、7、10月)に実施する企業向けの景気調査アンケート。通称で日銀短観と呼ばれています。企業の景況感を指数(DI)として計算しますが、なかでも注目が高いのは全国大企業のデータです。


景気動向指数(けいきどうこうしすう)

内閣府が毎月発表する景気指標。景気全体の動きをとらえるために、鉱工業生産指数など約30種類の景気指標をまとめていますが、大きくは景気を先取りする先行指数(機械受注など)、景気と連動する一致指数(鉱工業生産指数など)、景気に遅れて動く遅行指数(完全失業率など)の3つに分けられます。


鉱工業生産指数(こうこうぎょうせいさんしすう)

経済産業省が毎月下旬に前月分を発表する景気指標。主に製造業の景況感を示す統計として市場から注目されています。足元の国内の景気動向を見極める重要な指標ですので、株式市場や為替市場に影響を及ぼします。


機械受注(きかいじゅちゅう)

内閣府が毎月発表する製造業の受注額を集計した指標。企業の設備投資に約6カ月ほど先行すると言われています。ただ、月次の数字は月によって大きく振れることがあるので、日本の株式市場を動かす材料として注目されます。日本株の動向次第では、外為市場にも影響を及ぼす場面もありますので気を付けましょう。


消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう、CPI)

総務省統計局が毎月発表する、消費者物価の動きを集計した統計。「全国」と「東京都区部」の2種類があります。2000年を100として、すべての商品をまとめた「総合指数」、物価変動が大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品除く総合指数」も発表されます。
英語ではConsumer Price Index、略してCPI(シーピーアイ)と言います。米国のCPIは労働省が毎月発表していますが、物価変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数が注目されています。


IFO企業景況感指数(あいえふおーきぎょうけいきょうかんしすう)

ドイツのIfo経済研究所が発表する景気指標。約7,000社のドイツ企業に調査を毎月実施し、翌月下旬に結果が発表されます。日銀短観のように企業の景況感を表す指数ですので、ユーロの中心国であるドイツの景気動向を把握する統計として、市場の注目度は高いです。


ZEW景況感指数(ぜっとーいーだぶりゅーけいきょうかんしすう)

ドイツの欧州経済センター(ZEW)が発表する景気指標。企業に直接調査するIFO景況感指数とは違い、ZEW景況感指数は機関投資家やアナリストに対して、6カ月先の景気見通しを調査します。毎月中旬に発表されるので、IFO企業景況感指数に対する先行性も注目されています。


住宅着工件数(じゅうたくちゃっこうけんすう)

米国では商務省が毎月発表する統計。新築された住宅戸数を一戸建て、集合住宅の種類別と東部・中部・西部の地域別で発表されます。米国のほかにカナダ、フランスでも住宅着工件数が発表されています。


住宅建設許可件数(じゅうたくけんせつきょかけんすう)

住宅着工件数に先行する住宅関連指標。文字通り、地方自治体などに住宅着工の許可を申請する件数の統計データです。オーストラリアとニュージーランドでは住宅建設許可数と呼ばれています。